「心理的安全性」について

院長の中川です。本コラムでは、開院予定のクリニックで大事にしたいと考えている「心理的安全性」について、少し詳しくお話したいと思います。主に、これから当院スタッフへの応募を考えている方や、「心理的安全性」に興味のある方に向けて記載しています。

心理的安全性とは?

心理的安全性の概念を提唱したのは、ハーバード大学ビジネススクールのエイミー・エドモンドソン教授です。彼女の論文「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」の中で、職場でのパフォーマンスや、学習が促される条件についての研究結果を示し、心理的安全性の重要性を説きました。

心理的安全性とは、チームのメンバーが対人リスクを恐れずに意見やアイデアを自由に出せること、間違いや失敗を報告しやすいこと、困ったときにサポートを求められることが整った状態を指しています。このような環境が整っていると、スタッフは自信を持って仕事に取り組むことができるため、チーム全体のパフォーマンスが向上するとされます。

なぜ心理的安全性を取り上げるのか?

医療の現場は、通常医師が検査や治療の指示を出し、これを複数の職種が受け取ります。また、ある職種から他の職種に変わることが無いため(看護師さんは看護師さん、リハビリの先生はリハビリの先生として生涯勤務するため)、各職種での経験年数がそのままキャリアとして重視されることから、比較的、上下関係が意識されやすい職場であるといえます。私自身も、地域の基幹病院から名古屋大学病院で勤務を行う中で、「医師は医師の仕事を全うする」「上の先生の意見を尊重する」という環境に特に疑問を持たずに仕事を続けてきました。

心理的安全性を考えるきっかけは、2020年11月から2023年3月まで、日本医療研究開発機構(AMED)という日本の医療分野の研究支援機関に出向する際におとずれました。この機関で勤務する医師の数は全職員の1割程度であり、他に企業の方、中央省庁の人、看護師さん、放射線技師さん、薬剤師さんと様々な方々が勤務されていました。自分よりも年上の方が部下となり、自分よりも若い女性が上司であった時期もありました。

大きなプロジェクトを、30歳前後と一回り若手の職員達と進め、彼ら彼女らの豊富な知識と自身の経験など対等な立場で意見を言い合うことで、より良い仕事ができたと感じました。年齢や性別、職種に捉われないオープンな雰囲気がプラスに働く「心理的安全性が保たれた職場」を経験する機会を経て、自分のクリニックを立ち上げるにあたり、「このような職場を作りたい」と考えています。

心理的安全性が確立された職場を目指して

整形外科クリニックでは、多くの職種の方が勤務します。心理的安全性が高い環境では、スタッフ同士の信頼関係が深まり、協力しやすくなることが良いことだと考えています。スタッフと患者さんにとってより良いクリニックを目指すため、以下のようなことを重視した職場を作っていきたいと思っています。

1.コミュニケーションの促進

スタッフ間のコミュニケーションを促進するために、定期的なミーティングやカジュアルな意見交換の場を設けたいと考えています。ここでは、自由に意見を出し合える雰囲気を作り、看護師さんや、受付事務さん、リハビリの先生方など、それぞれの視点での気付きを積極的に報告できる場にしたいと思います。

2. フィードバックの重視

問題点を示すだけではなく、具体的な改善案も同時に考えることで、建設的なフィードバックを行っていきたいと思います。院長からスタッフへの一方向ではなく、スタッフ間や、スタッフから院長にも意見を言い合える雰囲気を作り、各自の意見やアイデアを尊重していきたいと考えています。

3. サポート体制の整備

スタッフが困ったときにすぐに相談できる環境・窓口を整え、問題解決のサポートを行っていきます。

最後に

開業まで、まだ半年近くの期間がありますが、院長として、「このようなクリニックにしたいな」という思いを、これから一緒に働くかもしれない方、当院を受診されかもしれない方と共有できればと思い記載しました。

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