あま中川整形外科・手のクリニック院長の中川です。みなさんは、整形外科で「超音波診断装置（エコー）」検査を受けたことがありますか？今回は、整形外科の診断や治療、リハビリテーションで大活躍している「エコー」検査についてお話しします。
超音波診断装置（エコー）について
エコー検査は、プローブと呼ばれる装置を皮膚に当て、その奥にある組織を映し出します。内科では肝臓や腎臓などの臓器の検査や、心臓の動きを観察する心エコー、産婦人科では妊婦健診で胎児の成長を確認する際に使われることが多く、比較的なじみのある検査です。では、整形外科ではエコーがどのように活用されているでしょうか。
エコーを用いた診断について
整形外科では、主に筋肉、腱、靭帯、神経などの軟部組織を詳しく観察するためにエコーを用います。例えば、靭帯損傷や肉離れなどのケガの診断で、その能力が発揮されます。他にも、手足にできた「できもの」の内容を確認したり、手根管症候群での正中神経の圧迫の程度を確認したりすることができます。エコーは診察室に常備できるため、問診や身体所見を確認した後にすぐに検査を行い、迅速な診断が可能となります。
整形外科といえばレントゲン検査が一般的ですが、レントゲンは主に骨や石灰化した組織を映し出します。一方、エコーは筋肉や腱、靭帯といった軟部組織の状態を評価することに優れています。打撲などのケガをした場合、レントゲンで「骨折が無いか」を確認し、エコーで「筋肉の損傷や、腱・靭帯断裂などがないか」を確認することで、より正確な診断ができるようになります。
また、エコーは野球肘健診でも活躍しています。持ち運びが可能なエコー装置は、集団健診の場で、肘の痛みの確認や関節可動域の計測と併せて、靭帯や軟骨の状態を評価するために使われています。
エコーを用いた治療について
エコーは診断だけでなく、治療にも役立ちます。ケガや炎症で癒着してしまった筋肉や神経を周囲の組織から剥がす「ハイドロリリース」という治療では、エコーを使って正確な位置に薬剤を注入します。また、肩関節脱臼の際に行う斜角筋ブロック（首のレベルでのブロック）や腋窩伝達麻酔（ワキのレベルでのブロック）ではエコーが不可欠です。針先の位置をリアルタイムで確認しながら神経まで進めることで、より安全な麻酔処置が可能となります。
リハビリテーションとの連携について
リハビリテーションにおいてもエコーの活用が進んでいます。理学療法士がエコーを使って筋肉や腱の状態を直接確認することで、動きの制限の原因となる筋肉の癒着や、痛みの原因となりうる神経を評価できるようになりました。エコーで得られた情報を基に医師と理学療法士がお互いにコミュニケーションを取り、治療計画を調整することができるようになってきました。また、エコーを用いた可視化は、患者さんが自身の状態を理解する手助けとなり、リハビリへの意欲向上にもつながります。
おわりに
今後の整形外科診療とリハビリテーションにおいて、エコーはさらに重要な役割を果たしていくと考えられます。当院でもエコーを積極的に活用し、患者さんにとってより良い診療とリハビリテーションを提供していきます。